谷山に住んでいる僕は歩いて夜飯の唐揚げを買いに行く
今日は酒でも呑みながら唐揚げでも頬張って22時には寝る
そんな感じの終わりにしたいのだ
梅雨時ではあるが、その日は雨が降っていなかったので、娘を風呂に入れた後、歩いて唐揚げを買いに行く
時刻は18時50分
少し薄暗くなってきた頃だ
唐揚げをしこたま購入し帰路につく
梅雨の中に密かに感じる夏の始まりの空気を吸い込みながらとぼとぼ歩いていると背後から声がする
声色からして男女
男女の会話だ
チャリに乗っているのか、その声は近づくのが早い
声の音圧から恐らくそれは10代
10台の梅雨時の男女の声なのだ
「ミルクティーでうがいした後だから大丈夫だよー」
女子が言う
「まぁね」
男子がどこか照れながら応える
「だってさぁ、なんにもなしでキスとかイヤでしょ?」
その言葉辺りで僕を二台のチャリは追い抜いて行った
二人の声は遠くなっていく
並走した二台のチャリのそのイチャイチャ感は背後から見ても十分おじさんに伝わるほどだ
ミルクティーか。。
最近の女子は肉食化していると言う
それは男がガツガツ行かなくなったからそう見えるだけなのかもしれない
それにしてもミルクティーでうがいをしたからキスOKとはどういう流れなのだろう
そうでもしないと彼氏はキスしてくれないのだろうか
だとしたら彼氏のミルクティーに対する概念がおかしくないか
考えれば考えるだけ馬鹿らしさとうらやましさが交互に襲いかかり、最終的にうらやましさが圧勝するので考えるのをやめた
なんだか彼らから、「青春」を感じた
お前らは気付いていないかもしれないが、それだよ
そのミルクティーが青春なんだよ
わかる時がくるさ少年よ
お前もいつか他人のミルクティーに嫉妬する日がくるんだ
遠ざかっていく男女の背中に先輩面したおじさんが嫉妬混じりのセリフをぶん投げる
彼らには届かない
おじさんの言うことなんて心に届かないのが青春なのさ
あー
ミルクティーでも飲むか
おじさんの飲むミルクティーはただのミルクティーなのだ
written by ハマゾノリョウジ
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