伝言膨張湾曲話 written by ハマゾノリョウジ


「人伝てに聞いた話」というものは大体事実よりも重増しになっていることが多い
 
 

重増しならまだしも、面白い方向、または人が興味を持ちそうな方向へと捻じ曲げられてしまうことさえあるのだ
 
 

僕らみたいな一般人には何も関係ないが、週刊誌やネットで日々報じられる芸能人のゴシップなんて捻じ曲げられまくりだというのは有名だが、これもまた芸能人本人とは知り合いでもないので捻じ曲げられているのか本当なのか、そのへんのことも本当のところどうかもわからない 
 
 
 

ある日、高校時代の友人が居酒屋でこんな話を始めた
 
 

「高校の時のK君覚えてるか?」 
 

K君とは大して話したこともないし、クラスにいるというくらいのものだ
 
 
 
 

焼き鳥を食いながら友人の話を聞いた
 
 

このK君の父親という人がある日
 

ヤギの乳が儲かる
 
 

という情報を聞きつけたという
 
 

その現実身のない情報くらいでは、「へー」くらいで済みそうなものだが、K君の父親はアクティブだ
 
 

即ヤギを購入したという
 
 

一体どこでヤギが買えるのか謎だが、儲かる話に即フォーカスするその姿勢は尊敬する
 
 

K君の父親は、いざ自宅でヤギの乳を搾乳して売り捌くべくヤギを育てたという
 
  

この時点で相当話が膨らんでいる雰囲気は感じつつ、続けて焼き鳥片手に友人の話を聞いた
 
 
 

育てている途中、K君の父親はある事に気付いたのだ
 
 

「こいつ(ヤギ)、オスだ
 
 

そんな 
 

そんな綺麗なオチのある話があるわけがない
 
 

そもそもヤギを買うあたりから膨らみを感じずにはいられないのだ
 
 
  
そんな話を鵜呑みにするほど、僕も鵜呑まーではない 
 

 
それにしても綺麗なオチのある話だ 
 

その綺麗すぎるオチに、ついつい僕もその日以降、各所でこの話をしているがこの話はこれ以上膨らめる事は出来ない完結品なのだ
 
 

事実はどうか知らないがこの話はこれでいいのだと思った
 
 
 

ザ・ジユウチョウに書くにあたって、K君本人に確認しようと思ったが彼の連絡先を知らないので彼の名前を伏せて勝手に書く事にした
 
 

 
もし何処かで会うことがあれば開口一番で
 
 

「お父さんってオスヤギ買ったの?」
 
 

と聞いてみよう
 
 

もし事実ならそのまま飲みに行ってその後のオスヤギの話を聞いてみようと思うのだ 

  
  written by ハマゾノリョウジ

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