沸くPoint written by ハマゾノリョウジ


飛行機で離陸前、CAさんが客席チェックを行う
 

僕は一言でも「その単語」を見られてはいけまいと「上司と部下のイかれた不倫もの」の本を閉じて伏せた
 
 

僕の斜め前のオバ様のチェックをCAさんが行い言う 

「お客様、お荷物を座席下へお入れ下さいませ」
 
 

何が危険なのか確かに理解出来ないがルールなので仕方ない
 
 

そのオバ様もそう思ったのか、ふて腐れながらカバンを座席下へ潜り込ませる
 
 

しかしやはり気に入らなかったのか、CAさんが次の座席にチェックに入っても身を乗り出してそのCAさんを睨みつけているのだ
 
 

シートベルトがなければ殴りかかる勢い
 
 

その睨みつける目は復讐に燃えるパニッシャーそのもの
 

そのくらいで怒らなくても。。
 

そう思う事はよくある事だが怒りのポイントなんて人それぞれなのだ
 
 

水の様に一律に100℃で沸騰するわけではない
 
 

あの人にとっての100℃は僕の2℃かもしれないし、僕にとっての100℃はあの人からしたら一切温度変化はないかもしれないのだ
 
 

そのくらいそれぞれだ
 
 
 
 

友人に徳田という男がいる
 

彼はグラップラー刃牙で描かれる様な人間離れした脚の持ち主で、脚相撲で何人もの脚をへし折ってきた危険人物だ
 

「脚」と表記したのはモモからふくらはぎ、土踏まずに至るまでが刃牙そのもの
 
 

道に落ちていたショートケーキを彼が裸足で踏んでしまったが、足の裏には生クリームなど一切付いていなかったくらい土踏まずの深みが発達し過ぎているのだ
 

 

そんな彼だが、脚は刃牙でも性格は温厚で「怒る」ということはあまりない
 
 

またそんな土踏まずを持っているからか、人の地雷を踏むこともほとんどない

 

そんな彼とかつて桃鉄をしていた時の話だ
 
 

そこには北という友人もいて、僕、徳田、北の3人で深夜に桃鉄をしていた
 
 

桃鉄をしたことある人はわかると思うが、よく出来たゲームなだけについ夢中になり、割と多くの人が沸点を迎えキレてしまうとてつもなく危険なゲームなのだ
 
 
 

温厚な徳田も桃鉄を前にして無我夢中
 
 
ボンビーを付けられようものなら舌打ち
 
 

物件を買い占めれば大笑い
 
 

という情緒不安定っぷり
 
 

対して僕も例外ではない
 
 

ハワイに吹っ飛ばされれば酒をカッくらって溜息
 

買っていたサツマイモ畑での臨時収入が入れば拳を天へ突き上げウィニングポーズ
 
 

といったメンヘラ具合
 

 
最終的にはお互いイライラし過ぎてコントローラーのプッシュ音と控えめにテレビから流れるゲーム音、ため息&舌打ちのみが響き渡る張り詰めた空間での桃鉄となった
 

  

ゲームを終えて一息 

「な、桃鉄やったらこうなるだろ?」 
 

 
今までの統計上、お互いがわかっていた
 
 

イライラしてこうなることくらい
 
 
 
桃鉄は素晴らしいゲームであると同時にその関係をぶち壊す能力を秘めたゲームだ 
 
 

しかし飲んだ勢いで「桃鉄やろーぜー」と後先考えず言ってしまう
 
  
やはり「楽しい」が勝ってしまう 
 
 
つくづく怖く楽しいゲームだ 
 
 
 
 

「てかゲームなのにそんな本気にならなくても笑笑」
 
 

北が僕らに言う

 

人それぞれ沸点はあるにせよ、桃鉄でキレない北の沸点はきっと存在しない 
  
 
 
そして桃鉄を「ゲームなのに」と割り切れる北は絶対にモテる 
 
 
 
    written by ハマゾノリョウジ

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