少年よ、ズボンに挟め -後編- written by ハマゾノリョウジ


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「七ツ島にある本屋に寄る」
 
 

この言葉を親から宇宿辺りで告げられて、そこからしばらく「どうする」「どう乗り切る」
そればかりが頭をグルグルと回る時間を過ごしている
 
 
 

「どうする」という言語が万華鏡を回転させた様にサイケデリックに脳内をグルグルグルグル
 
 

車の振動とタッグを組んで僕に襲いかかる
 
 
 
おかしくなりそうだ

 
 

というのも、僕は本屋とかCD屋の類がめちゃめちゃに好きなのだ
 
 

普段は「本屋に寄って帰ろう」と親に言われたら確実に乗り気な僕が「今日はいいや」なんて言って「車に乗って待つ」という選択肢を選んだ場合、それはいつものハマゾノ少年ではない
 
 
 
何か問題を抱えたハマゾノ少年と疑われ、そこを名探偵コナンに突っ込まれたら一環の終わり

 

本屋には絶対に行かなければならない
  

 

いつも通りを装う為には必修科目

 
 

僕は考えた

 
 

どうする
 
 
 

アダルトビデオを車に置いて行けばいい
 
 

そう思うかもしれないが前章でも書いた様にそういう犯人の凡ミスをコナンは逃さないのだ
 
 

あと1つ、車にアダルトビデオを置いていけない理由 
 

というか腹からアダルトビデオを出せない理由は、隣に妹がいるということだ
 
 

コナンがどうこうよりもむしろこっちの方が問題だ
 
 

というかこいつがコナンなのだ
 
 

腹にアダルトビデオを挟んだ状態で店内に入ることも考えたが、相手は本屋だ
 
 

店の入り口には盗難防止のセキュリティーが設置されている
 
 

幼き少年はアレが何に反応しているのか知らない
 
 

例えばレンタルビデオとか販売のビデオとか何かそのビデオの内部にある子どもの知らないチップ的なそういうものに反応しているとすれば、僕のこの腹に挟んだアダルトビデオにも反応してしまうのではないか
 
 

店を出る時に反応するピンポンが、まさかの入店ピンポン
 
 

振り返る親
 
 
腹を抱えて守る少年
 

剥がされる身包み
 

出てくるアダルトビデオ
 

価格1000円
 

泣き叫ぶ少年
 

泣き崩れる親
 

掛けられるワッパ
 

晒される個人情報
 

日々いたずら電話
 

日々誹謗中傷
 

会話のない淀んだ食卓
 

耐えられない家族
 

これはいかん

 
 

アダルトビデオが引き金になり一家離散がありえないなんて誰が言える
 
 
 

そうなんないなんて誰が言える
 
 

ありえる話だ
 
 

どうすればいい
 
 

。。。。
 
 
 

その店は店内にトイレがあるわけではなく、入り口の横にトイレがある
 
 

つまり店内に入らなくてもトイレにだけは入れるという事だ
 
 

!!
 
 

そこしかない
 
 

本屋に到着して車から出る
 
 

「トイレ行ってくるから先に本屋に入ってて」
 

今にも便が出そうなわけではないがとりあえず一旦行ってくる的雰囲気を見事に作り出す
 
 

計画は成功した
 

この「出そうなわけではないけど一旦行ってみる感」が後に響いてくることまで少年は逆算していた
 
 

トイレに入った少年は腹に挟まれたアダルトビデオを取り出した
 

およそ6時間ぶりにシャバに出たアダルトビデオもどこか清々しく見える
 
 

なぁ、タバコくれねぇか
 

シャバにでたアダルトビデオからそうも聞こえた
 
 

任務を遂行する
 

 
誰かが入ってくる前に少年はそのアダルトビデオを手洗い場下の物置へ隠した
 
 

そしてトイレを出た
 

時間は夜
 

夜にトイレ掃除に店員さんが来るとは思えない
 

お客様はまずあの物置を開けることはない
 

 
以上の子供らしい浅い2点から少年はそこをアダルトビデオの一時保管場所として厳選
 
 

完全フリー状態になった、つまり腹に何も挟んでいない状態になった少年は無双状態
 

 
堂々と本を立ち読みし、CDを見て漁った

 

何かをかばって生きることの辛さ
 
 

同時にかばって生き続けている人の偉大さに気付いた
 

「そろそろ帰ろうか」

親からのその一言に被せる様に言う
 
 

「ちょっともっかいトイレに行ってくる」
 
 

本来であれば「あんたさっき行ったばっかでしょ」と怪しまれ拷問されるところだが、
ここに最初の「出そうなわけではないけど一旦行ってみる感」が効いてくる
 
 

少年は「最初に行ったトイレでは歯切れが悪かったからもう一度行ってくる」というドラマをスムーズに演出してみせた
 
 

我ながらこのイレギュラーによく対応したものだと感心する
 
 

詰めの甘さが命取りということを念頭に置いた対処
 
 

少年は見事にアダルトビデオを手洗い場下の物置から救出し、腹に挟み、今度はスッキリした顔で車へ戻る
 
 

なんと華麗な演出

 
 

ハマゾノ少年のこの一連の流れを見て参考にしたと言われているものが、かの有名なオーシャンズ11なのではないかと思わせる程に華麗

 

そこの君、僕をダニー・オーシャンと呼んでくれ 
 
 
 

 
 
 
さてさて時は流れハマゾノ少年は完全にネットオンリーでアダルトビデオを視聴している
 
 

 
ある日、ふと、あのアナログな時代を思い出して書いてみた
 
 

そしたら3部作という珍しくちょい長いものになってしまった
 
 

デジタルよりアナログでの出会いの方がその一本に対する思い出が大きい
 
 

そのモノ自体がデジタルかアナログかもあるが、そういうことではなくネット上で完結するか実際に足を運んで物を買うか、そういう動き的なデジタルアナログ
 
 

デジタルもいいけどデジタルだけになるのはちょっと悲しいな

 
そないな感じでした 
 
 

ps. そのアダルトビデオのタイトルは忘れたがパッケージは全裸に靴下だけ履いた女性がファイティングポーズをとっているビデオだと記憶しております 
 
 
 
written by ハマゾノリョウジ

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