一人ラーメン王決定戦 written by ハマゾノリョウジ


家にいることを全世界が勧めている
 
 

何が正しいのか

 

それはそれぞれにあるが今は家にいることが正しいのかもしれないと僕は思うのだ
 
 

子どもが産まれてまだ小さいので僕はコロナ関係なく家にいる事が割と多い
 
 

家にいるのはそれはそれで根暗な僕は楽しみ方はたくさんあるのだ

 
 

 

子どもが寝て、奥さんも寝て、なんとなくネットニュースを見る
 
 

命よりも大切なものなんてものあるんだろうか
 

キロロじゃないけど「生きてこそ」
 
 

今更ながらそんなことを実感するのだ

 

 
なんとなくふと去年亡くなったおじいちゃんを思い出した
 
 

さだまさしより亭主関白だったうちのおじいちゃんは亡くなる割と寸前まで将棋を指しに行き、1人で市電を乗り継ぎ騎射場で催されるのきさき市に現れるくらいアクティブな人だった
 
 

僕と妹を天文館の焼肉屋に呼び付けておいて、「もうオイはのりいちを食って帰る」と焼肉からのラーメン梯子というギャル曽根レベルの発言
 
 
 

且つまだ2切れしか肉を食べていない僕と妹とばあちゃんを焼肉屋に放置してまじで1人夜の文化通りへと消えていくというレイプ具合

 
 

家にいる時は19時には床に着くヘルシーライフ
 
 

孫から見たらそんなおじいちゃん
 

でもめちゃめちゃ優しいし好きだった
 
 
 

 
何年も前、夕方にそのおじいちゃんの家に行った時の話だ

 

おじいちゃんは言う
 
 

「リョウジ、今朝早くからラーメンを作ったんだけど全っ然美味しくなかった」

 

聞くとどうやら即席ラーメンを作ったわけではない
 
 

なんと朝早くにベランダに出て、あまりの天気の良さに胸を打たれベランダでラーメンを作ろうと決心し、その場で出汁をとり始めたのだと言う
 
 
 
時間をかけてあらゆる食材をブチ込み、ベランダにて出汁をとる老人
 
 
 
さだまさしなので普段料理をしている様には見えないおじいちゃんが無知ながら試行錯誤し、出来た渾身のラーメン
 
 
 

それが不味かったのである
 
 
 

麺は既になかったがスープだけ少し頂いた

 
 

そこにあったのは無
 
 

僕は馬や鹿よりもバカ舌なのだが、その僕が言うのだ
 

 

何回か前のジユウチョウでも言ったが、そこには「無い」というものがあったのだ
 
 
 
あらゆる食材が見事なまでに互いを打ち消し合いプラマイ0の互角勝負
 
 
 
結果が「無」
 
 

つまり味が無いのだ
 
 
 

お湯に塩をぶち込んだ方が味がするのではないかと思わせる程にだ
 
 
 

厳密にいうと「味が無い」という味があった
 

 

味が無いならもっと何か足せばいいとも思ったがどこか凹んだ様子のおじいちゃんの表情をみると言えたものではない
 
 

それもそうだ
 
 

朝早く起きて時間をかけてラーメンを作ろうと
 
 

なんでも試行錯誤してるとき、夢中になってるときってのは楽しいものだ
 
 
 

楽しく時間が過ぎ、あーでもないこーでもないとやっていたらまさかの原点回帰
 
 

ブチ込まれた食材は何処へ

 
 
Where is ザ ブチ込まれた食材
 

それはそこで辞めたくなる気持ちもわかる
 
 

「まぁでもあっさりしてていいんじゃない?」
 
 
 

これが精一杯だった
 
 

俺の中のラーメン王はスープしか飲んだことのないあの謎ラーメンだ
 
 

written by ハマゾノリョウジ

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